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それはうつ病から来る極度のネガティブ思考が招いたヒステリーだった。
しかもこれが初めてではない。
彼女はほんの些細なことで自殺を試みては娘に止められるというのを繰り返してきたのだ。
しかし今回はその娘もいない。彼女の箍(たが)は完全にはずれてしまっていた。
『痛たたっ!痛てーよ!』
『ツボですよ~……多分』
そんな彼女を間一髪で止めたのは遠くから聞こえる娘の声だった。
声のする方を見れば娘が丘陵の下側の小川で昨日の少年と遊んでいる。
少女の楽しそうな笑顔がただ川で遊んでいるだけに感じられ、寸での所で刃は止まった。
(良かった。娘はまだ私の元にいた)
常盤沢江はホッとすると、再び何もなかったかのように散歩を再開した。
††††††††††††††
早速始まったのは少女のマッサージ練習だった。
うつ伏せの太一の背中を横に座る優奈がマッサージ(ツボ押し)するのだ。
優奈曰わく、お母さん最近肩凝りが酷いらしいのということだったので太一監修の元それは始まった。
たかだかマッサージと侮ってはいけない。
思いもしないことが人の心を動かすことはざらにある。
「痛いって!!」
「うるさいなもー」
だが、優奈のマッサージはハッキリ言うと痛いだけで全く要領を得ていなかった。
いや本当に痛い。無駄に細い女の子の指が体の節々に突き刺さるような感覚だ。
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