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「たく…何なんだアイツ--」
ゆっくりと立ち上がり顔を上げた太一の視界に何かが映った。
言葉が出なかった。
川の上流付近の岩場に立つそいつはじっとこっちを見つめている。
黒くて体は凄まじくデカい。つぶらな瞳に不釣り合いな荒々しい肢体。
ハチミツ大好きと言わんばかりにこっちをガン見して鼻をヒクヒクとさせていた。
「……」
††††††††††††††
「と、色々あったがなかったことにしてやる」
「はい師匠!!」
気前よく手を挙げる優奈を一睨みしてから始まったのは手紙作りだった。
二人がいるのは旅館の談話室(太一は女将さんに頼んで風呂を貸してもらった)。
正直ミサと鉢合わせしたらどうしようかと逡巡していたが手紙を外で書くというわけにもいかない。
「でもどうして『感謝の手紙』を書かなくちゃなのですかー?」
「ハチミツローションよかマシだと思ってな」
「……ごめんなさい」
「す、素直に謝られたら許すしかねーけどな」
「じゃあ質問を戻すけど、どうしてなの?」
「いいから黙って書け。理由はちゃんとあるから」
「うーん…うん!」
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