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木漏れ日のように街頭を照らすその喫茶店の弱い光が、ミサを仄明るく包む。
そして、彼は客となる通行人の数を確認しながら今回の収穫を考えていた。
(…あ、そういや飴きれてたな。よし、一ヶ月分は買おう)
という具合が目下続いている(因みに今までの“一ヶ月分”は一日で消費してきた)。
「えっと、ケーブルは……うん。コレでよし」
ミサは新調した(安物だが)ステレオアンプを店の配線に繋げた。
ギイィーーン……
延長コードで無理やり店から引っ張り出してもらった配電がギターに旋律を与える。
ビイィン ビイィーーン……
チューニングの感じは上々。ギブソンの弦をもう2、3度弾く。
ブンン イイィーーン……
そのたびにリズムのない音が羽虫のように空に霧散し、足音で満たされた街を飛び回った。
果たして何人が聞き入れてくれるだろうその音はしかし、
ふっと消えて
次の瞬間爆音に変わって単音の余韻をかき乱す。
他の店や近隣の有線スピーカー、足音までもバックコーラスに変えて、ミサの旋律はそこにある全てをかっさらった。
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