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ここからが彼の本領発揮、腕の見せ所だ。
路上ライブとは言い換えれば街行く人々の時間を奪い、おしなべて最後まで見られることはない演奏会である。
それを最後まで見せ、かつチップを貰うには相応の腕がいる。
それはエレキギターを使っているというアドバンテージを持っていても変わらない。
何故なら歌唱力の善し悪しに問わずライブの時間、曲調、ルックスなどにエキストラは強く反応するからだ。
観客は少しでも気に入らないところがあれば去ってしまう。
だからミサは一度のライブは20分弱かつ、歌うのはアップテンポで相手を飽きさせない曲と取り決めていた。
ルックスもまた然り、ダボダボの服、たくさん付けたバンドでダーティーだが力強い、良い意味でスラムな雰囲気を出す。
しかし、それはあくまでも演出上の話。
ライブの中心になれる大層なものではなく、引き立て役に過ぎない。
最も大切なのは“音”と“声”。
歪むか歪まないかギリギリの音量は嫌でもエキストラの耳をつんざく。
そこに適当なコードを淡々と乗せていくのだ。
一見簡単そうだが、それは彼の手によくなじむギブソンの存在があって初めて成立するのだという。
ただの爆音では人の心は掴めない。
そして“声”。
ミサの声は変声期を迎える時期にもかかわらず音域が広い。
男か女かどっちつかずのミドルボイス。
これは女性の集客に効果がある。
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