LIVE5/Voice and cry1/2

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 そしてその二つが重なることで初めて“歌”になる。  人の心を掴む“歌”になる。  響かせて 響かせて 麗しい声を 僕の等身大の女神  愛すべき 愛すべき 君の初めてを 僕の等身大の女神  いつまでも いつまでも 君を愛すと誓います 一応それだけ 伝えておくよ  今ミサが歌っているのは彼にとって最も思い出深い曲だった。  僕の等身大の女神  そう銘打たれた誰かさんの曲は、いつからか彼のオリジナルアレンジを加えられ今歌われている。  毎回始まりに歌う歌だ。  確かその楽譜は学校に置きっぱなしにしてしまったなぁ、と少し後悔している今日この頃。  大好きな あの子から お手紙 『元気してる?』で 元気になる  お返事は とりあえず 拝啓 『愛してマス』で 敬具っておく  歌いながら同時に思い出すのは、雨に打たれ立ち尽くしたあの日のこと。  それとレインコートを着たあの子……橘桧子のこと。 (………)  ミサの中で様々な思いが錯綜した。  飽和してもまだ溢れ出す思い出の欠片。  それでもライブは続く。チケットも約束もマナーもない自由な演奏会は終わらない。  次第に非難傾向のざわめきは消え去り、エキストラは皆彼の音に、声に聞き入っていた。  満員御礼。  いつの間にか観客はどんどん増え、彼を取り囲むように人だかりができる。  一曲目が終わり  二曲目が終わり  ちょっとしたMCが入って  三、四曲目が終わる。 「Thank you.See you next!……あ、お金はこの帽子に~」  終ぞミサは演奏会の終わりを告げた。
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