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“ミュージシャンのいる喫茶店”の店内は昔流行った洋楽のリメイク版が流され、内装もなかなか小綺麗にまとめられている。
ゴシック様式だかロマネスク様式だかの豪奢な模様が壁紙として張られ、ガラスの一部はステンドグラス。
にもかかわらず、お高い感じを出さないように店内は明るく、メニューもごく一般的な物にされているあたり、経営者の度量が伺える。
一等地でかつこの内装……ボンボンか店長。
ミサは以前会ったことのある覇気のない店長を思い浮かべながらコーヒーを口に含んだ。
「………」
因みに橘桧子は席の向かい側からその姿をじっと見つめている。
「……」
「……」
「……」
「……えっと、桧子も何か頼んだら?」
「お金無い」
「いや、俺出すから。だからあんまり睨まない--」
「すみませーん。カプチーノと季節のロイヤルストロベリーパフェお願いします。あ、ガムシロップ付きで」
「……順応早いね」
ミサは一つ1200円もする季節限定パフェを容赦なくたかってくる桧子に再び狼狽した。
同時に彼女は昔からそういう性格だったなぁ、と懐古に浸る。
……いや、昔はもっとお淑やかだったかもね。
「……で、それはそうと桧子」
「何?」
「何はこっちのセリフですよ」
きょとんとする彼女に頭を抱えつつミサは一番聞きたいことを聞いた。
「どうして今頃会いに来たんだ?」
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