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「どの口が言ってるの?」
即答だった。
「今まで散々探して、それでも会わせてくれなかったのはあなたの方」
「そうだったっけ?」
「ええそう」
そう断言する桧子には確かな根拠があった。
桧子がわざわざ調べミサと同じ高校に入学したにも関わらず、彼はそれを知るや否や自主退学してしまったことなどが良い例だろう。
他にも彼の自宅を訪ねるといつも居留守を使われたこと。
ライブ場所を転々と変えて彼女に足取りを掴ませないようにしていたこと。
挙げ句、受拒否やメアド変更はともかく、携帯番号を変えるために電話を買い換えられたと知ったときは流石の彼女の顔にも青筋が浮かんだ。
「まあそれは今からたかれるだけたかってチャラにしてあげる」
「……そうかい」
ミサは心底疲れた顔をして財布の中を見た。
いくらライブで潤っていると言っても、桧子の胃の限界は推して知るべし。
かなりの容量があることは覚えている。
しばらくの沈黙の後、桧子が頼んだパフェが運ばれてきた。
それ程大きくないが、とにかく豪奢なグラスに盛られた数種類のイチゴ類とクリーム、色とりどりの装飾じみたその他様々なトッピングにバジルの葉と練乳がかけられている。
確かに高いな、これはとミサの顔がひきつった。
「あー…ん」
そしてそれを大口開けて食べる桧子の姿を半目で見る。
(この様子ならもう一杯追加とか平気で言いそうだな…)
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