112人が本棚に入れています
本棚に追加
そしてそれっきり会話が止まる。
ミサは大概つまらなそうに再度天井を見上げ、船をこいだ。
一方で桧子は彼の返答を待っているか否か分からないほどに無心でパフェを口に運んでいた。
グラスの中はもうほとんど空になっている。
残っているのがクリームとコーンフレークだけなことからして、イチゴ然り好きなものは先に頂く主義らしい。
そんな風に随分みすぼらしくなったグラスを机の端に置いて彼女は紙ナプキンで口を拭う。
と、ウエイトレスを呼び止めようとしたので、それを阻むようにミサは二の句を繋いだ。
「残念だけど俺はまだその境地に達してない。君が思ってるほど俺はナイーブじゃないんだ」
彼は姿勢を正して水を手にとってコップの中の氷をカラカラ指で回し始めた。
「……てか、それもこれも君のおかげのはずなんだがね」
「……どういうこと?」
「どうもこうも、俺を孤独にさせたのは君自身だろ?何でも、俺に興味を抱いた人を徹底して脅し回ってるそうじゃないか」
桧子の訝しげな様子と先の少年の話に確信を得たのか、彼は饒舌に答えた。
「『死を運ぶ』とか『近寄れば不幸になる』とか言ってね。随分嫌われたもんだな、俺も」
「……」
「はぁ全く。俺は俺で君に会いたくないし、君は君で俺に誰も会わせたくない。本当に奇妙で武骨な人間関係じゃないか」
「……」
桧子はそれをひたすら黙って聞いていた。
「で、そんな関係が続いて早四年。今頃現れていったい何用かなんて野暮なことは聞かないけどね」
「……」
「俺にヤンデレ属性は効かないよ。束縛も嫌いだ」
最初のコメントを投稿しよう!