LIVE5/Voice and cry1/2

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††††††††††††††  そしてその翌日にミサの元を訪れたのが何を隠そう潟滝太一だった。  曰わく、ぶっちゃけ今朝いきなり橘桧子が家の前でチャイムも押さず、ぼーと突っ立っていたことには今でも戦慄している。  新聞取りに行きましょうか…っていう朝の習慣が仇になった。  ああ、そりゃ驚かせてもらったさ。  何と言っても形が形だ。  彼は某ホラー映画の貞子を彼女の容姿に見いだしてしまったらしい。  そのためろくに彼女の話を聞くことができず、 『--だから…ねえ、ちゃんと聞いてるの?』 『あ?あぁ、うん』 『そう。ならいいわ。じゃあこの切符を持って今すぐ駅に。着けば分かる』  そう言われて切符(往復)を渡され、『今日平日なんだけど?今6時なんだけど?』と言うまもなく桧子はさっさとその場を去ってしまった。  風とともに去りぬ貞子。……映画化は難しい(著作権上)。  因みに着けば分かると言われていたが、駅に着いた途端余計に分からなくなった。 『ん?君はこの前の…』  何故か知らないが雑多に混ざり、そこにはミサがいたせいだ。  最早デフォルトと化しているダボダボの服とチェス盤のようなリストバンドに、緑のバンダナ姿。  パーカーとジーンズというぱっとしない普段着姿の太一とは比較するまでもなく目立っている。  向こうも向こうで初めは太一の登場を不思議がっていたが、何か察しがついたのか、ため息混じりに彼をホームに連れて行った。
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