112人が本棚に入れています
本棚に追加
太一は息を荒げながら、こちとら根っからの都会っ子なんだと言わんばかりにミサに問い詰める。
「色々聞きてーんだけど、まず水、ライフラインは!?」
「ここは山だよ?川の水は澄んでいて美味しい天然水だ」
「電気、配電設備は!?」
「携帯の充電を気にしてるなら心配いらないよ。圏外だから」
「た、食べ物はどうすれば…」
「山菜はもちろん、川に行けば魚くらいたくさんいる、そういえば猪鍋って美味しいよね」
「美味しいね!でも火がなきゃ鍋どころか獣除けもできないよね!!」
「ライターくらいは貸し出そう」
ミサは矢継ぎ早に続いていく質問に必要最低限の言葉で応答していく。
一方今思い浮かぶ限りの質問がなくなったらしい太一は絶望に顔を染め、がくっと地面に崩れ落ちた。
「あーんまりーだー……」
「恨むなら桧子を恨むんだね」
「うぅぅ……」
「……ふむ」
そんな彼を見かねたのか、ミサは「釣り竿とテントのレンタル代くらいは出すよ」と言って旅館に入った。
律儀にライターを置いて行ったところからして、彼も多少の同情はしているらしい。
いいなあ……。こっちが猪と格闘してる間にあっちは『郷土の旬料理~猪のちゃんこ~』とか食ってんだろうな…。
徐々に遠ざかっていくミサの背中を目で追いながら、とりあえず太一は森を目指して歩き始めた。
最初のコメントを投稿しよう!