LIVE6/Voice and cry2/2

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 太一は自分もばっちりゆとり世代であることは棚上げして少女を『世間知らずなお嬢様』扱いし始めた(自らも若干教師キャラを気取る)。  少女の方も「そう言われれば習ってたかも」と半ば本気で信じているところが無邪気でいじらしい。 (こいつ、あほの子だ)  特殊な性癖は持っていないと自負している太一も、少女のリアクションには満足したらしく、それを起点にして彼の嘘豆知識が語られていく。 「因みにブッダの産声は『めんご』だ」 「ほ、本当に!?」  『天上天下唯我独尊』なんざ知らん。 「それに知ってるか?かの有名な史実『カノッサの屈辱』でお馴染みハインリヒ4世は魔法の言葉『めんご』のみによってグレゴリウス7世の許しを得たんだぞ」 「な、何だってー!?」  実際には三日三晩裸足で雪の中土下座しまくるという醜態だったらしいが。 「極めつけはアレだ。初めて有人ロケットの搭乗に成功したガガーリンは地球を見て何と言ったと思う?」 「な、何て言ったの?」 「『めんご』」 「ええ~!!」  我ながら言ってて分からない。ガガーリンはいったい何に対して罪悪感を抱いていたのだろう。 「す、凄いね!お兄さんは物知りだ!」  少女のキラキラした瞳を見ながら、太一はそろそろ頃合いかと思う。 「そうかそうか。じゃあ最後に一番の秘密を教えよう」 「えっ、何々?」  少女の健全な成長を願って一言。 「全部嘘だ」 「あ、あんまりだ!」
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