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「で、結局名前は?」
改めて名前を聞いてみると、今度はえっへんとばかりに少女は胸を張って、
「常盤優奈(トキワユウナ)!将来の夢は学校の先生だっ!!」
高らかに言った。
対して「知らんがな」と一言で太一はしめる。
同時に自分の小学生時代の担任がこの少女、常盤優奈だったらと想像してみる。
…学級崩壊が起こりそうだ。彼女中心に。
「あ、今なんか失礼なこと考えてたでしょ!?」
「失礼なことじゃない。必然的な具象だ。で、君はどこから来たの?地元?」
「ううん。お母さんと一緒に遊びに来た…ほら!あそこの人がお母さん」
太一は優奈の指差した方を向いた。
川にかかったアーチ型の橋の上。
優奈をそのまま大きくした感じの美しい女性がこちらを見て、薄く微笑んでいた。
††††††††††††††
『常盤沢江(サワエ)。彼女で間違いないよ』
「ふーん…」
橘桧子は携帯電話を肩で挟みながらミサの声を聞いていた。
場所は自室。パソコンの前。
キーボードをカタカタと押しながらディスプレイを眺めていた。
調べているのは今年度の国公立大学の合格者リストだ。当然正規のルートで手に入れたものではない。
そしてその膨大な情報と、ミサのライブを聴いて数日後亡くなった人の遺族を照らし合わせていく。
「つまり、彼女の娘を同志候補として提供してくれるってこと?」
どこまでも平坦な声に対して『…いかにも悪役みたいな言い方だね。誤解を招くよ』とミサは言った。
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