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「空気が読めることを感謝するよ」
「…何だよ急にかしこまって」
訝しげにゆっくり立ち上がる太一にミサは「つかぬことを聞くけど」と切り出した。
「潟滝君はどうして俺達がこんな町外れの旅館に来たと思ってる?」
「は?そりゃお前がここでライブしようってなったからだろ?プロでもねーのに地方ライブとか意味わかんねーけど」
「はぁ全く。桧子の話を本当に聞いてないみたいだね」
憂鬱とした表情でミサは首の後ろをポリポリと掻いた。
「確かに、ライブをするためにここに来たことは事実だ。間違いない。でも今言ってるのはその大本の理由だよ」
「大本の理由?」
更に疑問符が浮かび始める太一に対してミサは何の気なしに言った。
「今週中、遅くても今週末にはここに宿泊中の常盤沢江という人が死ぬ。それが理由だ」
疑問と結論の焦点がずれ「は?え?」となる太一を無視してミサは続ける。
「駅の一件と同じさ。人の死を察知したんだよ。嫌な話だけどね」
「ちょっ…いや、それは分かるんだけどよ!それとライブの何が関係あるんだ!?助けに来たとかじゃねーのかよ!?」
「あんまり大声出すなよ。もう夜なんだ。にしてもまた説明に困る言及だね」
「いいから答えろ」
「ふん」と短く鼻を鳴らしてミサはすぐに感情的になる太一を窘めるように説明し始めた。
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