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「なんでまたいるわけ?お兄さんは川が好きなの?」
「できればフカフカの布団とランデブりたかったんだけどな」
翌朝。件の川に遊びに来た常盤優奈を待っていたのはやや衰弱した潟滝太一だった。
よく考えるとあの後すぐに帰ったのが悪かったらしい。
意固地にならず素直にテントだけでも運び出していれば…後悔してならない。
夜の森は初めの頃は全く怖くなかった。
しかしミサへの怒りと呆れが時間に伴って沈静化していく度に熊注意の恐怖が身を襲う。
周りが樹海ということもあり、太一はろくに寝ることもできず、見晴らしの良い川縁で丸くなっていたのだ。
「ふーん、よく分かんないけど大変そう~」
「ああ、大変だったよ。まさか熊と戦う羽目になるとは」
「ふぇっ?く、熊と戦ったの!?」
「ああ」と言いながら太一は嘘のシナリオを創作する。
彼女のことだ。きっと大概な嘘もまかり通るだろう。
「全長3メートル。その頬には十字傷。右手は煌々と青く燃えていた」
「も、燃えてたの!?」
「うむ。恐らく発火念力系能力或いはその存在自体がファンタズマだったのかもしれん。どちらにしろ青い炎は魔界“ゲヘナ”から召還された悪魔の炎だった」
「な、何だってー!それでどうなったの!?」
不思議がる少女を前に太一は左手を前に突きだした。
「俺は地元では“伝説の左”と呼ばれた男だぜ?」
「すげーっ!!」
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