112人が本棚に入れています
本棚に追加
何の疑いも曇りもない目で優奈は彼の左腕を見つめた。
可もなく不可もなく日焼けもしていないどこまでも微妙な左腕。
我ながらこれが伝説なら世の中伝説だらけだと思った。
無理矢理こじつけても“ゼ○ダの伝説全クリに貢献した暇人の左腕”略して“伝説の左”がまだ似合う。
「ん、何でそんな悲しい顔してるの?」
「この手は破壊しか生み出さないのかと思うと…ね」
主にゲームのセーブデータとか。
「よく分かんないけど、で!どうやって倒したの?」
「デコピン」
「すげーっ!!」
ああスゴいな、そんな化け物がいたら。
無邪気に感激する優奈に背徳感を感じながらも、しかし彼女の健全な成長を願って一言。
「嘘だけどな」
「へ?ああ流石にデコピンで熊は--」
「熊登場のとこから」
「あんまりだっ!!」
素直な少女はまたも絶望的な表現を浮かべた。それを太一は満足そうな顔で見つめる。
「う、嘘は泥棒の始まりだー。そんな悪いお兄さんは将来弁護士志望の私が裁いてやるのです!!」
「いや、裁くのは裁判官の役目だから……てか昨日は教師とか言ってなかったっけ?」
「うん!!私ね、たーくさん将来の夢があるんだ!他にも正義のヒーローとか悪の帝王とか」
「両立難しそうだな。暗黒面にでも堕ちる気かよ」
最初のコメントを投稿しよう!