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「慎さんが希美を連れ出して 私が一輝と鞄、 持って行ったんだよね… あの時… 一輝にギュッ。って 手を握られて…」 「ナナがもがいて…」 「でも取れなくて… あの時から私の手は 一輝にずっと握られてる。 …あの時、 慎さんが希美を 連れ出さなかったら… 希美が鞄を持って出てたら… 私の手は、一輝に 握られなかったのかな…」 一輝は 私の手を取り あの時の様にギュッと握った… 「‥‥握ってるよ。 言っただろ? 俺は、ナナが何処に行っても 必ず見つけ出してやるって… 慎が希美ちゃんを 連れ出してなかったら… 俺がナナを 連れ出してた… あのまま別れる事なんて 考えてねぇよ。 そんなチャンス… 見逃す訳ねぇだろ? 俺を誰だと思ってんの?」 「一輝…有り難う‥‥」 「ナナの手は… これからも手離すつもりは ないから… ナナが嫌だって言っても 離さない。 何処まででも連れて行く。 …わかったか?」 「…わかってる。 何処にだって、ついて行く。」 一輝は私の頭を グシャグシャとした… そして、私の口に 野菜スティックの キュウリを差し出した… 「良く出来ました。ご褒美。」 一輝は私の好きな顔で笑った… 私は仕方なく、 一輝が持つキュウリを ポリポリと食べた… ウサギの様に… 「…一輝。私、今日… お姫様じゃなかった? これじゃウサギじゃん。」 「あ。ホントだ… お姫様ゴッコは ベットでしよ。」 一輝は言葉とは逆に 爽やかに言った。 「絶対? お姫様扱いしてくれる…?」 「承知致しました。」 一輝は頭を下げた。 すると急に お店のライトが消えて 暗くなった… 私はビックリして 一輝にしがみついた… すると… HAPPY Birthday のBGM… お客さんも みんな手拍子をしていた… マスターが私達の前に ロウソクのついたケーキを 持って来た… 私…!? 私は一輝を見た… 一輝は優しく頷いた。 振り返るとみんなが 笑顔で “おめでと~っ” と言ってくれた… 私はみんなに ペコペコ頭を下げ ロウソクの灯を 一息で吹き消した… みんなの拍手と同時に 明かりがついた。
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