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~誕生日翌朝~
理由は明らかだが、
私達は二人して寝不足だった…
一輝はいつもの様に
ソファーでシャツを着ながら
お茶を飲んでいた…
「あ~…こんな日に限って
車で行けないなんて‥‥」
一輝はボタンを
留めながら言った。
「…?スペアキーないの?」
「‥‥‥!!
…あるっ!!あるよっ…!!
…ナナ~偉いなぁ~。
イイ子、イイ子してやるっ!」
一輝は私をまるで犬の様に
髪の毛をグシャグシャとし
喉をゴシゴシと撫でた‥‥
「でも…車。
却って来てるのかな?
瀬名さんに貸して‥
瀬名さん、美鈴に
会いに行ったのよね…
車、置きに来たと思う?」
「‥‥だな。
‥‥でも、だとすると
アイルは今日、
車で出勤するだろ?」
「そうねぇ。
私、下に見に行こうか?」
私は立ち上がった。
「いいから、座っとけっ!!」
そう言いながら
一輝は携帯で電話をかけた‥‥
相手は解っている。
瀬名さんだ‥‥
「俺っ。‥‥‥ああ。‥‥
そう。迎えに来いっ。‥‥‥
ハア~~~っ!!マジかっ!
‥‥とりあえず来い。
待ってる。」
相変わらず…強引だな…
「車、あっちだったんだ。
来てもらうの?」
「ああ。‥
リンリンと一緒に来るって…」
「ハア~~~っ!!
美鈴と一緒~!?
泊まったの~!?
赤飯なのぉ~~~っ!!」
「赤飯なんじゃねぇの?
近頃の若いモンは…
我慢が足りねぇんだよっ!」
私は一輝を
ジィーっと見つめた‥‥
「何?その目は…
俺だって我慢したろっ?
かなりしたぞっ!
ニコルが
どれだけ辛い思いをしたかっ…痛々しかったよ…
俺は可哀想で
見てられなかったぞっ!
あ~思い出しただけで涙が…」
一輝は目頭を押さえた‥‥
「プッ…ハハハハ…」
私は一輝の頭を
撫でてあげた‥‥
「笑うなっ!!
ニコルが噛みつくからなっ!」
私は一輝のシャツのボタンを
留めてあげた。
一輝は顎を上に上げて
大人しくしていた。
「そうだね。ニコルは
我慢してくれたもんね。
我慢出来なかったのは…私よ。…案外、美鈴が
我慢出来なかったんじゃない?頑張り屋さんだから…」
「マジでっ!?
我慢して損した。」
「そんな事ないよ。
嬉しかったよ。
大事にされてる。
って思った…」
一輝は
誉められた子供みたいに
笑った…
ホントっ。
可愛いんだから…
私は一輝のシャツのボタンを
全部留め終えた。
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