第壱訓:日常

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 学校に着くと葉月は自分の所属する剣道部の部室へと向かった。 葉月はそっと戸を開けると、ゆっくりと部室の中を覗き込んだ。 「龍斗ー? 居ないのー? 居ないなら入っちゃうから――」 「誰が居ないっつった?」 「――ぎゃ!」  突如背後から聞こえた声に、葉月は悲鳴を上げた。 「なーにが〝ぎゃ!〟だ! いったい何時になったらその遅刻癖が直るんだぁ?」  葉月が振り向くと、そこには腰に手を置いて立っている五十嵐龍斗がいた。 「だっだったら龍斗が起きた時に私もついでに起こしてよ、家隣どおしなんだからさぁ!」 「馬鹿言え。お前を起こしてまともに目覚ませた事なんか一度でもあったかよ」  龍斗の言葉に葉月は小さく唸ると黙り込んだ。 「ほらさっさと教室行くぞ」 龍斗は葉月に背を向けて歩き出した。 「何さフリョーめ」 「なんか言ったか」  葉月の呟きに、龍斗は軽く眉間に皺がよった顔を向けた。 「何でもございません」  即座に答える葉月に、龍斗はため息を1つつくと、また歩き出した。 葉月はくすっと微笑むと龍斗の後に続いた。 .
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