第壱訓:日常

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「じゃぁまた後で」  校内の階段で龍斗が葉月に言った。 「うん、またね」  龍斗と学年が違う葉月は、二階まで上がったところで龍斗と別れた。 「おーおー、朝っぱらから暑いわねぇ」 「げっ! 光! 何時の間にっ!」  背後からの突然の声に葉月は声を上げた。 声の主、双櫻光はニヤリと微笑む。 「くのいち光ちゃんをなめるなよ」 「いやなめてねーし」  葉月は光の言葉を軽く受け流すと、教室へ足を向ける。 「教室、行こう?」 「おう」  二人は廊下の中間辺りの教室へと入っていった。 「よっ! 龍斗!」  三階の廊下で、龍斗は声をかけられた。龍斗が声のしたほうを向くと、そこには薄い茶髪の龍斗と同い年位の青年がいた。 「よぉ、白也。はよ」  龍斗は軽く挨拶を返すとまた歩き出した。 それと同時に双櫻白也も足を動かす。 「見てたぞー龍斗。ったく毎日毎日見せ付けてくれんじゃん。彼女居ない俺への当てつけかー?」 「そんな事をして俺に何のメリットがある。彼女が欲しいなら告って来る女子フルなよ」  龍斗は横目で睨むとそういった。 「それは嫌ー。俺には光ちゃんが居るもーん」 「シスコンめ」  二人は自分達の教室に入ると、席にカバンを乗せ、身軽になった。 「それに龍斗だって、女子達フルならさっさと葉月ちゃんに告れば良いのにさー」  白也の言葉に龍斗の顔は見る見るうちに赤くなっていく。 「う、うっせ! お前は何時も一言多いんだよ!」  龍斗はそういうと、白也をラリアットで押し倒すと四の字固めで押さえつけた。 「ぎゃぁぁ! 死ぬ死ぬ死ぬっ! たんまたんまっ!」 「問答無用じゃ!」 「ンノーーーーー!」  この二人のやり取りをクラス全員は無言で見守っていた。 「光ーなんだか上、騒がしいくない?」 「どうせいつものでしょ」  その頃葉月たちのクラスは平和にHRが始まろうとしていた。 .
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