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『行ってきまーす!』 玄関から子供達の元気な声がする 『行ってらっしゃい!』 優しい声で母は送り出す どこの家からも聞こえてきそうな… そんな場面で千由里の1日は始まる 慎一が旅立ってひと月以上経つ… なんの連絡もないまま 何度もメールを打つ千由里 打ってはみるものの送信する事なく携帯の電源を切る いつもこの繰り返し… 何もやる気になれず頭の中は慎一のことばかり 慎一が全てだった… どんなに触れたくても手の届かない場所へ行ってしまった慎一… 体調もすぐれず仕事は長期休暇をもらった だるい体を今日も引きずるように家事を始める千由里 鳴らない携帯は淋しげにテーブルの上に放置されている 洗濯物を干しにベランダへ… 空を見上げる千由里 この空は慎一の住む町まで続いている… そんなことを考えながらしばらく空を見ている 何をしてもどこに居ても考えるのは慎一のことばかりだった こんな中途半端な母性など捨ててしまえたらどんなに楽か… 最低な母親
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