149人が本棚に入れています
本棚に追加
『行ってきまーす!』
玄関から子供達の元気な声がする
『行ってらっしゃい!』
優しい声で母は送り出す
どこの家からも聞こえてきそうな…
そんな場面で千由里の1日は始まる
慎一が旅立ってひと月以上経つ…
なんの連絡もないまま
何度もメールを打つ千由里
打ってはみるものの送信する事なく携帯の電源を切る
いつもこの繰り返し…
何もやる気になれず頭の中は慎一のことばかり
慎一が全てだった…
どんなに触れたくても手の届かない場所へ行ってしまった慎一…
体調もすぐれず仕事は長期休暇をもらった
だるい体を今日も引きずるように家事を始める千由里
鳴らない携帯は淋しげにテーブルの上に放置されている
洗濯物を干しにベランダへ…
空を見上げる千由里
この空は慎一の住む町まで続いている…
そんなことを考えながらしばらく空を見ている
何をしてもどこに居ても考えるのは慎一のことばかりだった
こんな中途半端な母性など捨ててしまえたらどんなに楽か…
最低な母親
最初のコメントを投稿しよう!