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時間だけが過ぎていった 頭の中も… 心の中も… 何も整理できないまま 身なりも気にせず、買い物や家の用事で出かける銀行などへ行く以外は外へ出ることもほとんどない千由里 慎一の為に少しでも綺麗でいたい 若くいたい 女でいたい そんな思いは今の千由里にはなかった ただ人間として生きていく事だけで精一杯の毎日だった 予想していたとは言え こんなにも辛く苦しい虚しさをあとどのくらい味わえばいいのだろう 遠距離不倫なんて…やっぱり有り得ない あきらめにも似た思いが千由里の中に芽生えてきた その時… 千由里の携帯は鳴った 慎一からの着信だった 急いで電話をとり 『もし‥もし… ‥』 声にならないようなか細い声で千由里は言った 『元気だったか?!』 忘れたくても忘れられない慎一の声だった その声は懐かしさと安心感でいっぱいだった こみ上げる想いに涙がこぼれる 『慎ちゃん… 』 言葉にならない千由里 3月も下旬… 千由里の心の雪も溶けて 春の匂いがほのかに漂う
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