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「それじゃ失礼しま~す」
「失礼します」
「はい。親御さんと、それから叔父さんによろしく伝えて下さい」
準備室を去り際に、軽く鼻から息を吸い込む。
テレピン油の薫りが気分をさらに高揚させて、わたしはドアを閉めると同時に、
「いぃぃやったぁぁぁぁ!!」
と拳を握って跳び跳ねた。
「よかったね、紗智ちゃん」
「うん! 画材費用を稼ぐのが1番の目的だけど、実はあのお店でバイトするのってちょっと憧れてたんだぁ」
奥に長細い店内は床が板張りで、歩くとコッコッコッ、と柔らかいような固いような独特な足音がする。
年季の入った珈琲カラーの内装や調度品。
そのどれもが持つアンティックな雰囲気がとっても素敵なのだ。
「よし! さっそく叔父さんに報告だぁ~!!」
興奮が抑えきれず、わたしは廊下の『走るな危険!』という貼り紙にエアーキッスをして全速力でかけ出した。
「あぁん、待ってようぅぅぅ」
「八重ちゃんはやくはやく!」
気分は上々ヨーソロー。
朝の不機嫌なんて右足のかかとがうなりを上げて蹴飛ばしちゃう。
サイコーだ!
実に、サイコーだ!!
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