☆最悪かつ最高なアイツ

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「それじゃ失礼しま~す」 「失礼します」 「はい。親御さんと、それから叔父さんによろしく伝えて下さい」  準備室を去り際に、軽く鼻から息を吸い込む。  テレピン油の薫りが気分をさらに高揚させて、わたしはドアを閉めると同時に、 「いぃぃやったぁぁぁぁ!!」  と拳を握って跳び跳ねた。 「よかったね、紗智ちゃん」 「うん! 画材費用を稼ぐのが1番の目的だけど、実はあのお店でバイトするのってちょっと憧れてたんだぁ」  奥に長細い店内は床が板張りで、歩くとコッコッコッ、と柔らかいような固いような独特な足音がする。  年季の入った珈琲カラーの内装や調度品。  そのどれもが持つアンティックな雰囲気がとっても素敵なのだ。 「よし! さっそく叔父さんに報告だぁ~!!」  興奮が抑えきれず、わたしは廊下の『走るな危険!』という貼り紙にエアーキッスをして全速力でかけ出した。 「あぁん、待ってようぅぅぅ」 「八重ちゃんはやくはやく!」  気分は上々ヨーソロー。  朝の不機嫌なんて右足のかかとがうなりを上げて蹴飛ばしちゃう。  サイコーだ!  実に、サイコーだ!!
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