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カランカラン、というブリキのベルにお出迎えされて、わたしは勢い良く店内に入った。
「薫叔父さんやったよ!」
カウンターから中に身を乗り出しながら親指を突き出す。
「こらこら。他のお客様がびっくりするだろうが」
困り顔をしながら頭を軽く小突かれてしまったけれど、
「ま、おめでとさん。これでサチ坊もウチの店の一員だな」
その拳はすぐに開かれてわたしの頭をぽんぽん、と叩いた。
がっしりとした身体と万年無精髭の薫叔父さんは、見た目とは裏腹にとってもやさしい。
目尻にシワを刻んで微笑む表情がうちのお父さんと良く似てて、あぁやっぱり兄弟なんだなぁと思う。
お父さんはもっとスマートだけどね。
「サチ坊はやめてよね。わたしもう高校生なんだから」
「はっはっはっ。そりゃすまんすまん」
悪びれず豪快に笑う叔父さんに頬を膨らませていると、
「はぁ、はぁ、はぁ……紗智ちゃん速すぎるよぅ……」
遅れて八重ちゃんが店にやってきた。
「ご、ごめん八重ちゃん!」
慌ててグラスに水を注いで手渡す。
あわわ。
興奮し過ぎて置いてきぼりにしちゃったよ。
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