☆最悪かつ最高なアイツ

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「ふぅ、ふぅ……」  うちの高校は坂の上にある。  ひとことで坂といってもこれがまた長く険しい急な坂で、まだ夏の始めとはいえ登校するだけで汗がじんわりと肌に浮かぶ。  もう少し勉強していればこんな場所にある高校にいく必要もなかったのに……。  我ながら自分の脳みそがうらめしい。  ただ、この坂から見える景色は、悪くなかった。  右に視線を移動させると眼下には住み慣れた町。  ミニチュアのような家々の間を縫うように走る線路。  そこからさらに奥。  そこには朝陽をキラキラと瞬かせる海。  美しいなんてことまではいわないけれど、なんともいえない心地よさがある。 「ザ・青春よね」  なんとなくそんなことを感じる風景。  周りの子たちは「平凡なただの田舎」というけれど、わたしにとってはかけがえのない大切な町だった。  と、
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