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彼女が悪く思われるのは、僕としても気分がよくないし。
因みに、花積が言った通り、僕は一応のところライトノベル作家を志している。とは言っても背水の陣で臨んでいるわけではないし、『なれたらいいな』程度の心構えなので、あまり口には出していない。しかし、一年程前にうっかり花積に口を滑らしてしまい、それが花咲ングダム発足のきっかけになったのはまた別の話。
「別に嫉妬はしてないけど、羨望には値するよ。確かに花積の書いてきた物語は、本当に凄かった」
「そうだろう」
ふふんと、誇らしげに胸を張る花積。まんざらでもないらしい。
実際お世辞でも強がりでもなく、彼女の物語は凄まじかった。圧巻と言ってもいい。あくまで見えるんデスでの仮想世界は、夢という映像で再現するものなので、ストーリーの展開やキャラクター、世界観でしか判断できないのだが、それらが常軌を逸していたのだ。
魅力的な登場人物たち。物語に合わせて揺れ動く主人公(視点は僕)の心情と、ヒロインである少女の境遇。心憎い箇所で明かされる切ない過去、主人公たちを取り巻く陰謀。伏線に続く伏線が複雑に絡み合い、ラストで全てが収束する技術には、正直あまりにも凄過ぎて嫉妬すらできなかったのが本音だ。
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