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古びた教会の地下大聖堂。幾多もの燭台の灯りが、これから迎える終末の予言を暗示する人の命のように頼りなく揺れる空間で、僕は全ての元凶(くろまく)でありかつての親友である少女と向き合っていた。
互いに言葉は無い。交わされる視線は悲しくも冷たい、敵意の旋律。仲良く野原を駆け回った幼きあの日々、僕達が還る場所などもうないのだと、僕はここにきてようやく現実を受け入れる。
一歩、彼女が足を踏み出した。それに合わせて、宵闇の髪が静かに揺れる。
発育の乏しい小さな身体。ふっくらとしたみずみずしい唇。僕が一番好きだった、強い意志に満ちた紅の瞳。そこにいるのは僕が知っている彼女と何ら変わり無く、だからこそ、余計にこの結末が悲しかった。
けれどそれも、僕が自分の手で選んだ結末だ。未来を恐れ、全てから逃げ続けてきた末に初めて取った決断。世界か、友達か。とても簡単で、そして何よりも残酷な設問だった。
数十億の命と、一人の命。僕が思っていた以上に、この世界は易しくできていたんだ。
彼女に習い、僕も一歩前に進み出る。手に持った剣を強く握り締め、臨戦体勢を整えながら。
そして。
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