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「なんでだよ!!」
檻花(おりばな)学園第二校舎、使用されていなかった予備準備室を改装した部室で、僕は衝動のままに叫んだ。
眼鏡のように掛けていた(というか眼鏡そのもの)『見えるんデス』を外し、それを丁寧に胸ポケットへとしまってから、そこから伸びるコードを手に持っていた本体へとキッチリ収納してようやく、彼女――詰花花積(つみばなかづみ)へと向き直る。
「相変わらず馬鹿丁寧だな、"王"は」
十畳程の空間、部室の中央に置かれた来客用ソファーの向かいに座る花積が、不機嫌そうに答える。
特に機嫌が悪いわけではないのだろうが、そう見えてしまうくらいの仏頂面が彼女のデフォルトだ。
流れるような長い黒髪に、日本人離れした線の細い顔立ち。若干つり気味の目尻と標準装備の眉間に寄せられたしわ。そして何より目を惹かれるのが、エメラルドのような碧眼だった。
彼女の父親がフランス人で、その血が眼や顔立ちに現れている。正直、髪が日本人である母親譲りの純和風美人そのものなので、綺麗な碧があまり映えていないのだが、それを補って有り余るくらいに花積自身の造形は完成されていた。
それこそ物心ついた時からの付き合いである僕から見ても、こうして"彼女の本性"を目の当たりにしていても、二つ返事で可愛いと断言できてしまうくらい。
ただ――。
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