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彼女には一つだけ、決定的に欠けているものがあった。
「全く……そんな馬鹿丁寧だから、友達いない歴=年齢なんだ。もう少し肩の力を抜いたらどうだ」
いつものお小言と共に、花積が立ち上がる。飲み干したコーヒーのお代わりを入れに行く為だろう。
しかし、そうすることによって彼女の欠点が白日の元に曝されてしまった。
部室の隅に設置された棚の前に立つ花積。その一番上に収納されているコーヒー豆の入ったビンを取る為だ。しばし、何かを決意するように棚を"見上げていた"花積は、やがて意を決したかのようにカッと目を見開き、全身をバネのように縮めた。そしてそれによって蓄えられたエネルギーを一気に解放。まさに跳ねるような勢いといった様子で、天高く左手を掲げながらジャンプした! それはさながら神に救いを求める民の如く!
結果。
数秒後には、左手を棚のガラスにべったりと押し付け(指紋がつくから止めてほしかった)、いわゆる、一世紀程前に流行した『猿の反省』姿でうなだれる花積が完成していた。
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