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ほんわりとした気持ちにさせてもらったので、僕は無言で立ち上がると花積の元へと歩いて行き、棚からコーヒー豆のビンを取り出した。
"本来なら"ここでコーヒーを煎れるのも僕の"仕事"なのだが、ここは部室だし、そこまでやってしまうとプライドの高い花積の心を折ってしまうので、素っ気なく彼女の手に渡しておく。
花積は一瞬、悔しそうに唇を噛み締めるが「すまない」そう言って、部室の奥にあるコーヒーメーカーへと向かって行った。
で。
ここからが肝心な話というか本題。
コーヒーが完成し、再びソファーに向かい合って座り、ワンテンポ置いて僕は話を切り出した。
「――で、話を戻すけど。何なんだよ、あれは」
煎れたてのコーヒーを猫舌にも関わらず一口すすり、「熱っ」とお決まりの反応を示したところで花積は答える。
「何だとは何だ」
この素っ気なさもいつものことなので、特に気にしない。
「これだよ、これ」
僕はポケットから『見えるデス』の本体を取り出し、花積に突き付けた。
「ああ、そのことか――」
どうやら自分でも思うところ
があったらしく、あっさり察してくれる。
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