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――僕らが日常的に使用し、『この部』の根幹を占めると言っても過言ではないこの『見えるんデス』とは、正式名称を複合型情報統合仮想構築装置と言う。その名が示す通り、インプットした情報を元に仮想世界を構築することのできる便利グッズだ。
情報の入力・演算・統合・その他諸々をこの小型のコンソール(携帯やパソコン代わりにもなる優れもの、カラーは僕の好きな黒)で行い、出力だけを先ほど胸ポケットにしまった眼鏡型の機器が担当する。こちらの色は赤だ。線の細いフレーム、擬似ガラスのレンズ、普通の眼鏡と何ら遜色のないその出力機器が、実は結構凄かったりする。
そもそも仮想世界は、映像として出力されるわけではなく、使用者の脳内にあくまで"仮想"として直接構築される。いわゆる、夢のようなものだと認識するのが一番分かりやすいと思う。
つまり、この眼鏡は人間を一種の催眠状態に導き、コンソールから送られてきた情報を元に"夢という仮想世界"を構築するのだ。
人間が夢を見る原理が解明された現代だからこそできる芸当。この『見えるんデス』は発売から10年も経つが、いまだに後続機が絶えることなく開発され、もはや携帯やパソコンと並ぶ一種のブランド、ないしカテゴライズ商品と化している。
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