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看護婦同行のもと、泰子と大河は3日ぶりに竜児と対面を果たした。
「竜ちゃん?泰子だよ」
酸素マスクはしていないが、頭に巻かれた包帯や腕についているチューブが痛々しい。
最初視線はおぼろげにふらつき、ついで泰子を捉える。
そして、ドラマのようなセリフ。
「あの…あなたは?」
「泰子だよ。お母さんだよ」
「すいませんが…初対面の人にお母さんと言われても…」
竜児の口から発せられる信じられない言葉。
「やっちゃんだよ…やっちゃんだよ」
涙を流しながら、やっちゃんだよ…と繰り返す。
そんな姿を見て、大河は何もしゃべれない。見ていて悲しい。
「お母さん…あまり刺激を与えないづください」
看護婦に諫められ、一緒に病室を出て行く。
残されたのは、竜児と大河だけになった。
「あの…あなたは?」
「………!」
答えられない。受け入れたくない。
竜児が私を知らないなんて、受け入れたくない。
そんな大河が出した答えは、
「私…逢坂大河って言うの。よろしく」
「逢坂さんですか…よろしく」
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