いつも通り

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「大河。明日の夜、時間空けといてくれ」 「………」 「明日は記念日だったな。すまない」 やっとこっちを向いてくれた大河に、誠意を込めて頭を下げる。 自分のみっともなさに反吐を吐きたくなるが、卑下するより先に謝らなくてはいけない。 自分を憐れんだところで、結局は何も変われはしないのだ。 それを良く知っていたからこそ、頭を下げた。 「…いいわよ。顔をあげなさい」 冷たく大河は言って、竜児の真正面。視線がぶつかりあう。 「あんたが何を考えてるかしらないけど、そう言うなら空けてくわ」 「………ありがとう」 お互いに見つめ合ったまま、微動だにしない。 テレビの漫才が聞こえてくる。インコちゃんの寝息(いびきともいう)が聞こえてくる。 周りからは、音が耳から伝わってくる。映像が、目から伝わってくる。 でも心は目でも耳でも、触れたってわからない。 じゃあどうしたら心はわかるのか。 それを探るように、竜児は大河を見る。大河は竜児を見る。 たぶん、形でも五感をフルに駆使しても、わからないだろう。 でも通じ合える。そんな証拠はないが、竜児はそれだけは言い切れる自信があった。
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