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「そうだ」
コートを着直した竜児は、手を打って呟く。
「大河。出かける用意しろ」
「え?」
「ほら、早く」
大河をせき立て、自分もカシミアのマフラーを用意する。
ダウンジャケットを着た大河は、白と赤のしましまマフラーをして現われた。
「行くぞ」
「行くってどこに?」
「いいから着いてこい」
大河の手を取り、リビングを突っ切って歩き出す。
「竜ちゃんどこいくの~?」
「ちょっとな。遅くなるかもしれないから、風呂入って寝てろ」
玄関を出て、一応鍵を閉める。このご時世、何が起こるかわからない。
「後ろ乗れるか?」
「うん」
知人から譲り受けたスクーターからヘルメットを大河に投げてよこし、シートの前側に座る。
大河は後ろから竜児に抱き付くように座り、滑るように走り出す。
スクーターの免許を取っといて良かった。
竜児はしみじみそう思った。
「ねぇ竜児。どこ行くの?」
「お楽しみだ」
どんどん町から離れ、郊外へと向かう。
スクーターのエンジンだけが響き、まばらにある住宅も少なくなってきた。
竜児はどこに行くんだろう?
大河はずっとそんな疑問を描いていた。
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