いつも通り

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「私は…私も竜児に会えて、人生が変わった。ご飯作ってくれる、朝起こしてくれる、部屋も掃除してくれる…」 まだうつむいたままだが、しっかりと大河の声は竜児に届く。 「竜児といたら、1人じゃないって、そう思える。竜児がいたから、1人じゃないって分かった」 そして、大河は顔をあげた。 「私で良かったら、お願いします」 暗くて見えないが、大河の顔は真っ赤に染まっている。竜児も真っ赤に染まっている。 大河の左手をとり、薬指にゆっくり指輪をはめる。 小さなダイヤがついた指輪は、夜空の星を切り抜いたようだ。 はめおえて、しばらく見つめ合う。そして、どちらからともなく顔を近付ける。 唇が重なる。 今この瞬間、株価はどれだけ下がっているだろうか。どれだけ環境破壊が進んでいるだろうか。 なんて、そんなことどうでもいい。 この先不幸は降り懸かるだろう。こらえきれない悲しみもあるだろう。 でも、大河と2人でいれば乗り越えられる。 だって、2人の世界は1秒単位で時を刻んでいるのだから。 唇を離し、抱き合う。鼓動を重ねる。 竜児と大河は、世界に溺れることなく、確かに2人で存在する。
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