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久し振りの晴れ間模様が見えた空には、先日積もりに積もった雪を溶かそうと太陽が輝いていた。
2階建てのボロアパート、南向きの窓から入り込む太陽光―――は、手前のドデカイ高級ブルジョアマンションに遮られていた。
相も変わらず薄暗い高須家のリビングに、朝から怒鳴り声が響き渡る。
「も~、バカバカバカバカバカ竜児!!炊飯器のスイッチを押し忘れるなんて、何やってんのよ!?」
「しょうがないだろ!!昨日はバイト終わったのが12時頃だったんだから!!」
極道ヅラの家事スキル万能男子こと高須竜児は、こういう時のためにストックしておいた冷凍ライスを取り出した。
うるさいガキだな焼き肉にして弁当のおかずにしてやろうか、と思っているのではない。
焦っているのだ。
「ほんと駄犬なんだから!!」
そんな竜児を責めたてるのは、身長143cmというミニマムサイズのフランス人形、逢坂大河だ。
とっくに大学に行く準備はできていて、ちゃぶ台の前に座り込み飯を催促している。
「あと3分…いや、2分待て!」
鬼神の如きフライパンさばきで、冷凍ライスはあっという間に簡単エビピラフに。
高須家の朝は、いつもより慌ただしかった。
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