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「何とか間に合った…」
急いで家を出て走ったおかげで、いつもの電車に乗ることができた。
隣りでは大河が乱れた髪を手櫛で直しながら、はふぅと一息。
「全く…あんたのせいで余分な体力使っちゃったじゃない」
「お前が3回もおかわりしなけりゃ、もう少し余裕だったっての」
なんと大河は、この時間がない朝でもおかわりを3回もし、なおかつまだ足りないらしくコンビニに寄ったのだ。
「そうやって人のせいにするわけ?この性悪姑クズ駄犬は」
そう言いながら袋からおにぎりを取り出す。
のりが破れて包装のなかに残っているが、取り出さずに袋にゴミをねじこむ。
「そののりも食えよ」
「いいじゃない別に。死ぬわけじゃないし」
「何てこと…MOTTAINAI!」
「古いわよバカ」
ズバッと斬り捨てられ、竜児はそれ以上の抵抗をやめた。
あれから1年たっても、大河のとげとげしさは変わらない。
「優しくなったと思ったんだけどなぁ…」
聞こえないようにボソッと呟いたつもりだったが、大河の地獄耳はしっかりと聞いていた。
「優しく?誰が?」
その目は、1年前はおろか会って間もない頃と変わりは無かった。
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