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「どうしたの、バカチー?」
「な、何でもない…」
覚悟を決め、亜美は竜児の前に出た。そして、皆と同じように話しかける。
「私、川嶋亜美。覚えてる?」
「川嶋亜美さんですか。美しい方ですね」
亜美のことも忘れてしまっていた。4人は竜児を見つめ、竜児は4人を見つめ返す。
そのまま沈黙の時間が続く。
「あの…」
唐突に竜児は口を開いたので、4人は驚いた。
「僕の名前、わかります?」
「………!!」
その言葉を聞いて、実乃梨は涙を流した。
「………」
亜美は唇をかみしめ、大河は目を背ける。
だが、北村だけは違った。
「お前の名前は高須竜児だ」
竜児の目を真っ向から見据え、名前を告げた。
「北村君…」
「お前は家事スキルが万能で、友達思いで優しくて、俺のことを助けてくれた、ちょっと目付きが悪いのがコンプレックスな高校男児、高須竜児だ」
竜児はほうけたように北村を見ている。その目から感情は伺えない。
「僕は…高須竜児…」
竜児が小さく口を動かして、何かを言おうとした。
「面会時間終了です」
そこで看護婦が入ってきて、4人は病室を出ていった。
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