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「いや、1年前のこの時期色々あったじゃん。あの時のお前は、すごい素直で可愛かったな、って」
素でそう言った竜児に、大河の顔は赤くなった。
「あ、あれは…えと、その…ええい!!」
「ふがっ!?」
テンパった大河は、食べかけのおにぎりを無理やり竜児の口に押し込んだ。
ふがふが言いながらなんとか咀嚼し、ゴックンと飲み込む。
食道のあたりで詰まり、胸をドンドンと叩く。
「いつの間にゴリラになったのかねぇ」
「ゲホッ…誰のせいだ、誰の」
「自分のせいでしょ」
さっきまで赤い顔してたくせに、今はツーンと窓から外を見ている。
まだ積もっている雪が、道行く小学生の団体によって削られ、雪玉になって飛び交う。
小学生は無邪気でいいな。と、心の中で思う。身長だけならこいつも小学生だな、なんて。
「なに笑ってんのよ。怖いわよ」
「…おう。ちょっとな」
何だかんだで1年、無事に2人は一緒にいる。
あん時は結婚とか言ってたっけ。と思い出し、小さな頭のつむじを見やる。
こいつはどう思ってるんだろう?
そんなことを考えながら、電車はいつもの駅についた。
今日もいつものいつもの…いつも通りの日常が始まった。
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