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カキィィ―……ン
白いボールが青空に吸い込まれていく。
あっという間にその姿は見えなくなり、どっかで審判がホームランを告げている。
それに呼応するようにわっとグラウンドが湧く。
ええいやかましい。自分に向けられているにしても、ちっとも嬉しくない。
俺は、相手の守備選手にすっごい嫌悪感丸出しの視線をぶつけられながら、グラウンドを走る。
あぁ、本当に申し訳ない。あとでいくらでも謝るから、とりあえず今は許してくれよ。
遠くから黄色い歓声。
近くから冷たい視線。
とても憂鬱だ。晴れ晴れした天気がなおのこと腹立たしい。
しかし、さらに憂鬱なことがある。
「よくやったな、下僕」
ホームに戻ると、お姫様が快活に笑っていた。
ああ、むかつく。
腰まで伸びた白銀の髪をさらっとかき上げ、腕を組む『お姫様』。
組んだ腕から溢れんばかりの胸がまた憎たらしい。思春期の俺には目の毒だ。
何よりも、この鋭い目がむかつく。氷玉でも入れたみたいな瞳。見るだけで、心の臓まで凍てついてしまいそうになる。
これで美人なのだから、まったくもって始末に終えない。
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