crystal snow

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目の前に、つま先の尖った黒いブーツ。 ブラウンのカシミアのストールを羽織った 君が立っている。 あの頃より、随分と大人びて 綺麗な君を見た僕は、息をするのも忘れていた。 君はあの頃と変わらない顔で笑っている。 それから僕等は、あの頃と同じように並んで座り 他愛もない話をした。 だけど、上手く笑えないのは 大人になってしまったからか、見慣れない君に緊張してしまったからなんだろう。 懐かしいね、と笑う君は 僕の知らない、遠い人みたいな気がして 少しだけ寂しくなった。 この景色も、君の笑顔も あの頃と変わらない筈なのに。
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