13人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前に、つま先の尖った黒いブーツ。
ブラウンのカシミアのストールを羽織った
君が立っている。
あの頃より、随分と大人びて
綺麗な君を見た僕は、息をするのも忘れていた。
君はあの頃と変わらない顔で笑っている。
それから僕等は、あの頃と同じように並んで座り
他愛もない話をした。
だけど、上手く笑えないのは
大人になってしまったからか、見慣れない君に緊張してしまったからなんだろう。
懐かしいね、と笑う君は
僕の知らない、遠い人みたいな気がして
少しだけ寂しくなった。
この景色も、君の笑顔も
あの頃と変わらない筈なのに。
最初のコメントを投稿しよう!