七方美人

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朝のラッシュ時間にピタリと重なる登校だけど、駅の位置的に空席に座れる。 片道約30分。 隣にわざとらしく座る副会長の存在が、当たり前になってしまった。 話をするわけでもない。 たまに、途中駅で乗ってくる妊婦や老人に、私の隣を譲ったり。 子連れの人のために、私を道連れにしたり。 社会の模範生みたいな態度をとっては、一人ニヤついている姿を見掛けるくらいで。 それ以上もそれ以下もない。 毎朝、掠める程度の関係が、季節の移ろいに逆らって、変わらなかった。 私が知っているのは、たまに親切な振舞いをとって。 自分の信念一直線で。 その信念というのは、ヒーロー像に基づいていて。 自分が正義だと言い張る、副会長。 それ以外、何も知らない。 知らなくてよかったから。 この時、私はこの関係すら厭わしかったけれど。 未来が見えていたなら、どれほど素敵に思えたことか。 .
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