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――ひらひら、ひらひら。
桜の花びらが舞い踊る通学路を、黒い学生服に身を包んだ雨水岬が歩く。
中肉中背の彼にこれといった特徴はない。
強いて言うなら、学校祭の女装コンテストで優勝した実力を持つ女顔と、長い髪の毛だろうか。
「…ちょっと早く着きすぎたかな?」
公園にある奇妙なオブジェの前で立ち止まり、右腕に巻いた古びた腕時計を眺め眉を潜めた。時計の針は、七時五十分を指している。
いつも一緒に登校している腐れ縁の幼なじみ二人は、だいたい八時頃にこの待ち合わせ場所である公園に来るのだ。
「まぁ…いいか」
上を見上げると、雲ひとつない快晴の空。
そんな清々しい空をぼんやり眺め、時間を潰すのも悪くないかな……と岬は思う。
よっこらせ、とオブジェに腰を掛ける。
岬の髪を揺らす春の風は、制服越しからでも十分寒い。
「…欲を言うなら、熱いお茶をすすりながら眺めたかったな。あと、せんべいがあれば完璧」
「おいおい、いつからおっさんになったんだよ岬ー?」
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