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「ただいま~」 「あ、お帰り大翔ちゃん」 「そらー、お帰りなのー」 「はいはい、ただいま」 身を屈めて、透き通る青の髪を撫でた大翔はブレザーを脱ぎながらあたりを見渡した。 ‡ 何の変哲もないマンションの一室。一歩入ればそこは―――お化け屋敷だった。 ‡ 「ねぇ、そらー。お土産ないのー?アメとか、チーズケーキとか」 ケーキ、の所で大きな三角を描いた少年に苦笑する。 「ある訳ないだろ、梵。学校に行ってきただけだ」 脱いだブレザーをハンガーに綺麗に吊しながら光琳寺大翔(コウリンジソラ、17歳、女)は言った。 「そうなのー?…あぅっ」 後ろで聞こえた、ドテッという音に大翔はため息とともに振り返った。 案の定、視線の先では先ほど梵と呼んだ人物がズッコケていて、潤んだ右目で大翔を見上げていた。 「そら、痛いのー」 「だろうな」 梵天丸がどこかしらで転けるのは毎度のことなので、大翔はもう起こしてやらない。そもそもコイツ(ら)は妖なのだから、フローリングで転けたぐらいじゃ何ともない。転ぶのが嫌なら顕現しなければいいのだ。……妖なんだし。 梵こと梵天丸は妖だ。つまりは妖怪。魑魅魍魎、百鬼夜行、物の怪の類。 種族(?)は龍神で前世は伊達政宗。戦国時代で天に召された後、どういう訳か龍神に成ったらしい。 ‡
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