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1週間後に発表された番号に僕の番号はなかった。 不合格。 ただそれだけ。 四年生から頑張って進学塾に通っていた努力が水の泡だ。 水の泡。 この語彙を覚えた時は5年生の時だっけ。 まさか本当に使うなんてなぁ。 5年生の時は、母さんも父さんも、僕に優しかったな。 6年生の春、父さんの会社が倒産した。 父さんと友達とで始めた小さな印刷会社だった。 倒産した日。父さんはべろんべろんに酔って帰ってきた。 1か月くらい、父さんは「職安」というところに通っていたが、仕事が見つからないのに嫌気がさしたのだろう。 生活保護費を奪ってパチンコに行ったり、飲んだりしている。 今、僕と母さんは…おばあちゃん家(母さんの実家)にいる。 母さんは毎日のように 「お父さんのようになっちゃだめよ」 「あなたには期待しているのよ」 「あなただけがお母さんの生き甲斐なんだから」 と言った。
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