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俺の大声は図らずもクラス中の注目を集めてしまったことに気づき、赤面した。
「そ、それで今は?」
「授業にも普通にでてたからな。大丈夫なんじゃね?」
「むう……」
そのおっさん、万死に値する!
俺達が話している新田さんっていうのは、同じクラスの新田玲菜(にった れな)のことだ。
俺は十秒以上彼女を見つめていると鼻血が止まらなくなるので、今日の様子が変かどうかなんて分からなかった。
黒いストレートの髪に白いカチューシャをつけて、目がぱっちりしているスレンダー美女な彼女は俺に言わせれば間違いなく学校一の美少女だ。
何でもっとモテないのかわからない。
そこらのアイドルよりもよっぽどかわいいのに。
いや、モテたらモテたで困るが、世界中で彼女の魅力に気づいているのが俺だけだというのは実に不可解なことだ。
この不平等の解消には、それこそ政府が取り組むべき課題であると俺は大まじめで考えていた。
「実? 顔真っ赤だぞ?」
「だ? だだだって今日暑いじゃん? もう夏だよなあ! 早く練習したいなあ!」
「今五月だし。今日の練習は休みだろ。な~にテンパってんだよ?」
あぁー! そのニヤニヤ笑い止めろ!
将語はいつもこうだ。
俺の……ほら、その……新田さんに対する気持ちを知っていながら(たぶん)、敢えて気づいていないふりをする。
そして事ある毎に新田さんの話題をふっかけてくるのだ。
基本いい奴なのに変なところでタチが悪い。
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