真道実

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「ただいま」 俺は玄関の薄闇の中でつぶやくと、自室に入った。 人生に冷めてる、か……。 俺はニヒルに自嘲してみた。 まあ、そう見えるようにキャラ付けしてるわけだし。 だが、俺はかっこいい男像を、ほかでもない語に言われたことに動揺していた。 語に言われたことは、俺の中の本質を突いているような気がしていた。 それは決して、喜べるようなことではなかった。 俺は首を巡らせてリビングの時計を見た。 まだ16時過ぎ。 「父さんが帰ってくるまで時間あるな……」 ということは急いで夕食を作らねばならないということでもない。 久しぶりに(我ながら学生とは思えない)勉強でもしようと机に向かい、現代社会の教科書を開けた。 今のアメリカの政治について。 俺は教科書に載っている何代目かの大統領の写真をながめた。 (アメリカか……そういや昼間、学が大統領がどうとか……改革がどうとかって……) 瞼が重い。 (大統領って……英語でなんて言うんだっけ…… Pで始まる……なんだったっけ……) 眠い。まだ机に向かって数分だというのに。 今日は部活がなかったから疲労はそこまでではない。 ここで寝落ちはもったいない。 俺は必死で睡魔にあらがった。 (プ、プリ、プラ……違うな……プレ、プレ…… ぷれじでんと。そう、それだ……) ぼんやりとした視界には教科書の中の大統領の歯の白さがうっとうしく思えた。 (やばい……部活がない日くらい勉強しないと……まずいのに……) 弱々しく目をこすった。うん、限界だなこれは。 (いいや、ちょっとだけ……十分だけ……) ゆっくりと夜が迫る中、俺は眠りの中に落ちていった。
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