真道実

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風呂の残り湯を抜き、スポンジで浴槽を洗う。 自然とさっき見た夢のことを思い出していた。 少しずつ近づいているんだ、地球に。 何が?  わからない。光、としか言いようがない。 俺にはなぜか、あの光は彗星のような質量を持ったもの……物質ではないという確信があった。 それに使命って……あの光に意識とかがあるっていうのか? 光なのに? 俺は頭を振って手に持つスポンジに力を入れた。 バカか。あれは夢だ。 夢だからツッコミどころがたくさんあって気になってるだけだ。 真剣に考えるなんて馬鹿げている。 ……本当にただの夢か? ただの夢なら何でこんなに……胸騒ぎがするんだ。 目が覚めても内容を鮮明に覚えている夢なんてこの十六年間であったか? ……ない。 じゃああれは……? 「実? そんなに念入りに磨く必要はないんだけどなぁ」 父さんが歯ブラシを咥えて風呂場のドアから顔だけ出していた。 手元をみると、浴槽はピカピカだった。
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