226人が本棚に入れています
本棚に追加
悲鳴は、遅れてやってきた。
「いやあああ!!!」
『うるせえなあ~』
悲鳴を上げた女子生徒はしかし、化け物に殴り飛ばされ、机にぶつかって低くうめいた後に動かなくなった。
蜂のような化け物は襲撃を続けていたミイラの様な奴らに向かって手をあげた。
すると、ひとことも発さなかった黒い奴らの動きが止まり、蜂野郎の方にのっぺらぼうの顔を向けた。
もう誰も声を上げない。荒い息づかいと泣き声だけが突然静まった教室でやけに大きく響いていた。
襲撃が止んだこのわずかな間に俺はいろいろな物をみてしまった。
現実とは思えないような光景。人が倒れ、血が流れ、机やいすが破壊されてスクラップになっている。
まだ奇跡的に襲撃を受けておらず、意識があるのは俺も含めて七、八人。
その中には新田さんも居て、俺はほっとした。
しかし、皆虚ろな目をして正気を失いかけている。当然だ。第一、今俺が正気かどうかも怪しいもんだ。
そして、新田さんの近くに目がいった俺はある物を見た。
冷たい手で心臓を鷲掴みにされたような気がした。
そこには倒れて動かない、語、将語、学がいた。
最初のコメントを投稿しよう!