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頭が真っ白になった。
俺は突然無言になった蜂野郎と手下と思われる真っ黒ミイラ達に気づかれないようにじりじりと三人の方に近づいていった。
やつらには気づかれていない。ついに語のすぐ近くまでにじり寄った俺は語の手首にそっと触れた。
……冷たい。
その冷たさは俺の奥底にしまわれていた恐怖を呼び起こしていた。
あのときと一緒だ……母さんが死んだあの時と。
リアルな死。
一時的に麻痺していた恐怖が盛り返してきた。体がふるえる。
その震えが内臓まで揺らし、俺は強烈な吐き気に襲われた。
反射的に口を押える。
「なんで……」
どうしてだ? どうして俺の大切な人達は俺の周りから居なくなる?
このつらさだけはもう二度と感じたくなかったのに……。
『そうか。やはり〈奴〉はここにいるのか……』
蜂野郎と黒ミイラの無言の時間は終わった。
また襲撃が始まるのだろうか。
逃げきれない。
俺も、やられるだろうな。
……どうでもいい。
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