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『人間よぉ……ちょっとばかし調子に乗りすぎたなぁ』
蜂野郎が針を引き抜くと俺は膝から床に崩れ落ちた。
とたんに俺を襲う体験したことのない痛み。
「あぁ………がっ!」
大声を上げたいのにできない。
痛すぎる。
なんだこの赤いの……血?
嘘だろ、何だよこの量……。
意識が遠のいていく……。
すると俺は体が宙に浮くのを感じた。
お迎えか、と思ったが、薄れてきた感覚から察するに、どうやら俺は蜂野郎にのどを捕まれて移動しているらしい。
片手で。怪物だな、ホント。
光の加減からして窓際か……。
普段なら丘の上高校自慢の芝生のきれいな中庭が見えるはずだがもう目を開ける気もしない。
痛い……。
『さあ、どうだ? これで外の世界も見納めだ……怖いだろう? 悲しいだろう? まだ死にたくないだろう? くっくっく……存分に感じろ……』
耳鳴りがする。怪物の声も、他の音も、全てが遠のいていく。
自分の呼吸をする音だけが、やけにでかい。
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